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前川 雅樹; 河裾 厚男; 吉川 正人; 一宮 彪彦
Materials Science Forum, 445-446, p.144 - 146, 2004/05
SiO/SiC界面に存在している界面準位の評価は、高性能なSiCデバイス製作のための重要な問題である。われわれは陽電子消滅法によって熱酸化法によって作製された4H-SiC MOS構造のSiO/SiC層を評価した。これまでわれわれは、ゲート電圧に対する消滅線のドップラー拡がり(Sパラメータ)の変化を測定してきたが、Sパラメータの変化はMOSの各層で消滅した成分を含んでおり、単純に界面準位の量を反映するものではないと思われる。そこでMOSに紫外線を照射し、界面のみに変化を誘起させることで界面準位の陽電子への影響を選択的に捕らえることを試みた。紫外線照射によりSパラメータが減少した。これは紫外線照射により生成したホールがSiO/SiC界面に蓄積し陽電子の移動が妨げられ、欠陥への捕獲効率が変化したためと考えられる。紫外線消光後もSパラメータは減少したままであったが、バイアス回路の開放による急速な電荷の移動を促したところSパラメータは回復した。これにより、SiO/SiC界面には蓄積したホールを一時的に保持できる多量の準位が存在することが示唆された。
平出 哲也
Materials Science Forum, 445-446, p.234 - 238, 2004/02
浅く捕まった電子と陽電子によるポジトロニウム形成は低温域での高分子中や分子固体中の現象を矛盾なく説明し、予測された現象,可視光の効果,ポジトロニウム形成の電子濃度依存性,遅れて起こる形成、などを実験により検証した。この新しいポジトロニウム形成は浅く捕まった長寿命の電子と陽電子の反応によるため、強磁場中,極低温では浅く捕まった電子がスピン偏極する。ここにスピン偏極した陽電子を入射し、ポジトロニウム形成を起こすと、形成されたポジトロニウムのスピン状態の分布に反映され、実験で確認できる。この現象を用いることにより、陽電子のスピン偏極率の測定も可能であると考えられる。これら内容について招待講演する。
平出 哲也; 豊川 弘之*; 大平 俊行*; 鈴木 良一*; 大垣 英明*
Materials Science Forum, 445-446, p.474 - 476, 2004/02
陽電子消滅法はとてもユニークで重要な手法であるが、陽電子は通常試料外部から入射する。そのため、試料は真空中に置くか、放射性同位元素を試料で挟み込まなくてはならない。最近、SelimらはLinacを用いて2MeVの線を作り、その線で試料内部に陽電子を生成させることで、厚みのある試料内部を試料の破壊をせずに陽電子手法で観察することに成功した。われわれも同様の手法をレーザー誘起コンプトンバックスキャッタリング線(20MeVまで)により試料内部に陽電子を生成させ試みてきた。この手法ではまっすぐに進む線上に試料を置くだけでよく、試料は空気中,ガス中でも問題なく、例えば、高温試料,融点付近の金属などの陽電子消滅法による観察なども可能である。
河裾 厚男; 深谷 有喜; 林 和彦; 前川 雅樹; 石本 貴幸*; 岡田 漱平; 一宮 彪彦*
Materials Science Forum, 445-446, p.385 - 389, 2004/02
これまで、われわれは反射高速陽電子回折における全反射と一次ブラッグピークの存在を実証した。しかしながら、最構成表面に付随する分数次回折点の観測には至っていなかった。そこで、Si(111)77を用いて陽電子回折実験を行った。その結果、陽電子回折図形における1/7から3/7の分数次ラウエ帯の存在を発見した。さらに、鏡面反射点の入射視射角依存性(ロッキング曲線)を決定し、アドアトムによる陽電子の非弾性散乱に起因する構造を見いだした。従来の電子回折実験で決められている原子配置と吸収ポテンシャルを使用すると、実験結果が再現されないことから、これらのパラメータを変更する必要があることが判明した。
平出 哲也; 熊田 高之
Materials Science Forum, 445-446, p.301 - 303, 2004/02
高分子や分子性固体に入射した陽電子は陽電子トラックの末端に形成されるスパー近傍で熱化し、近くに存在する過剰電子などの活性種と反応し、ポジトロニウムを形成する。この形成では電子のスピンは完全にランダムである。一方、放射線等で起こるイオン化に伴って放出される電子は十分低温では浅く束縛され、暗黒中で長時間安定に存在する。自由陽電子は浅く束縛されている電子を引き抜いてポジトロニウムを形成できるが、この電子の場合、強磁場中,極低温に置くとスピンの方向は揃いはじめ、偏極させることができる。そこに偏極陽電子を入射し、形成されるポジトロニウムのスピン状態に効果が現れることを実験で確認した。
Chen, Z. Q.; 前川 雅樹; 関口 隆史*; 鈴木 良一*; 河裾 厚男
Materials Science Forum, 445-446, p.57 - 59, 2004/00
アルミニウムイオン注入によって酸化亜鉛中に生成する損傷の熱的振る舞いをエネルギー可変低速陽電子ビームを用いて調べた。イオン注入量が10Al/cm以上に増加すると、注入層が非晶質化することが見いだされた。また、その後の600Cまでの熱処理によってポジトロニウム(陽電子と電子の安定結合状態)が生成することから、注入層にはサイズの大きなボイドが形成することが判明した。そのボイドは、600C以上の熱処理で注入層の再結晶化に伴って消失することが見いだされた。その後、注入されたアルミニウムイオンはほぼ完全に電気的に活性化されn型伝導に寄与することがわかった。電子移動度も注入以前に比べて向上することが知られた。さらに、カソードルミネッセンス測定からは、紫外発狂強度が著しく増加することがわかった。以上の知見から、酸化亜鉛の電気的・光学的特性は、アルミニウムイオン注入とその後の熱処理によって改善されることが言える。